椿を観る [城南宮 椿図鑑]



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椿

 椿はツバキ科ツバキ属の常緑小高木で、光沢のある濃い緑の葉をもちます。「つばき」の名前は、厚みのある葉の意味で「厚葉木(あつばき)」、つややかな葉の「艶葉木(つやばき)」、光沢のある葉の「光沢木(つやき)」が訛ったなどと言われています。日本固有の常緑樹のヤブツバキは、本州(青森県)から沖縄県いたるまで自生しており、耐寒性に優れ、樹勢が強いのが特長です。色は紅色で、花形は一重咲きですが、稀に花色や花形に優れた品種ができることがあります。
 城南宮に自生する藪椿には、特長のある花色や花形の”城南椿” や樹齢200年の藪椿 ”離宮椿” や樹齢300年の藪椿 ”長生椿” が育っています。その他の苑内の藪椿は薄いピンクや紅色、紫がかった花弁など少しずつ違いを見ることが出来ます。
 椿は他家受粉で結実するため、花色や花形に変異が生じやすく、品種改良が行われてきました。江戸時代に、二代将軍徳川秀忠が椿の園芸に熱中したことで、椿ブームを迎えます。参勤交代によって、諸国から江戸に椿が持ち込まれ、たくさんの品種が生まれました。城南宮では、江戸期から見られる古典椿を含めて、150品種・約400本の椿を育てており、9月頃から咲き始める早咲きの品種、5月ごろまで咲いている遅咲きの品種もあり、晩秋から新緑の季節まで長い期間楽しんで頂くことが出来ます。

”城南椿” (じょうなんつばき)
 藪椿の一種。苑内に4本自生しています。真紅の花びらの小ぶりの愛らしい筒咲きの椿を城南椿と呼んでいます。春の山の入口あたり右側に3本育っています。
”離宮椿” (りきゅうつばき) 200年椿
 藪椿の一種。”源氏物語に関わる椿の道” の真ん中あたりに育っています。幹の周囲は、約90センチ、樹高 約9メートルの推定樹齢 200年の藪椿です。平安時代、白河上皇はこのあたりに院政の拠点となる城南離宮(鳥羽離宮)の造営に取り組んだと言われています。その城南離宮(鳥羽離宮)に咲くことから ”離宮椿” と呼んでいます。均整のとれた茶筅円筒形の筒しべで、花の中央のあたりにふくらみのある優美なたたずまいの椿です。
”長生椿” (ちょうせいつばき) 300年椿
 藪椿の一種。”源氏物語に関わる椿の道”の 200年椿 ”離宮椿” をさらに進むと、推定樹齢300年 幹の周囲 約1,2メートル、樹高約10メートルにも及ぶ藪椿の古木があります。この藪椿の背後(塀の向こう側)には、昭和40年頃まで川があり、ちょうどこの藪椿が育っているあたりは土手になっていました。そのため、斜めに向かって大きく育ち、苑路の反対側の木の根元あたりには、幾重にも重なり蛇腹のようになった木のしわが確認できます。推定樹齢300年、神苑内のいちばんの古木ということから ”長生椿” と呼んでいます。紅色の平開咲きです。
 
※樹齢鑑定:椿園株式会社(愛知県 稲沢市) 令和3年4月



城南宮 椿図鑑 [150品種 約400本の椿]

 神苑内で育つ椿は、150品種・約400本です。これらを城南宮独自の視点で、8っのカテゴリーに区分して、植栽しています。
 ①古典椿
 ②近代・現代椿
 ③神紋にかかわる椿
 ④⑨秋咲き椿
 ⑤咲き分け椿
 ⑥吉祥文字を含む椿
 ⑦源氏物語に関わる椿
 ⑧変わり葉椿
 
 *① と ② は、作出年代にこだわった区分です。
 *③ ⑥ ⑦ は、椿の品種名を城南宮の独自の視点で区分しています。
 *④ ⑨ は、秋咲き(9~11月に咲き始める)の区分です。 
 *⑤ は、椿の咲き方のひとつの特長の ”咲き分け” の区分です。
 *⑧ は、葉に特徴のある ”変わり葉” の区分です。


古典椿の道
 日本では、古来より花を庭に育てて観賞したり、さらに優れたもの、珍しいものを得ようと品種の選抜や交雑等が進められ園芸文化が育まれてきました。特に江戸時代において大きく発展しました。椿も江戸時代に品種改良が進み、たくさんの品種が生まれましたが、このころから見られる椿を一般的に「古典椿」といいます。この ”古典椿の道” では、江戸時代の人々も楽しんだであろう数々の椿をご覧ください。
 *「古典椿」の区分は、苗の購入先の資料や日本ツバキ図鑑を参照しています。
 *一部、「古典椿」に属さない品種もあります。


近代・現代椿の道
 城南宮では、「古典椿」に対して、主に明治以降に作出された椿を「近代・現代椿」と総称して育てています。
 *作出年代は、苗の購入先の資料や日本ツバキ図鑑を参照しています。


神紋に関わる椿の道

 城南宮の神紋は、 ”三光(さんこう)の紋”といい、日・月・星を象っています。それらの文字を名前に含む椿を中心に、神社や神道に関わる言葉などが名前に入っている椿を集めました。


秋咲き椿の道
 9~11月に咲き始める『秋咲き椿』は、椿の中では珍しいあずき色の花が咲く「京の誉」をはじめ、苑内全体では約30品種を育てています。紅葉の色づく晩秋から3月ごろまで長い期間楽しめます。



咲き分け椿の道 と 吉祥文字を含む椿の道
 「咲き分けの椿は、一本の木にさまざまな色や形の花が咲く品種です。特に”七曜変化”は、花の色・花の形とも多彩で、花色は白地に紅縦絞や吹き掛け絞りや赤色など、花形も八重咲き・宝珠咲き・牡丹咲き等を見ることができ、「一週間(七つの曜日)で毎日変わった花を見る事ができる」ということから名づけられました
 吉祥文字を含む椿は、椿の名前の中に「宝・寿・福」など縁起のいい文字が入った椿を集めました。

源氏物語に関わる椿の道
 数ある椿の品種のなかには、源氏物語に関わる名前が見受けられます。ここでは、「光源氏」「葵の上」「藤壺」など源氏物語の登場人物の名前や「若紫」「初音」など源氏物語の巻名がついた椿、源氏物語に関連する言葉が含まれた椿を育てています。

変わり葉椿の道
 錦魚葉(葉の先端部分が分岐して尾びれの形状になる)、盃葉(葉が受け皿上に反りかえる)、桜葉(桜の葉のようにギザギザになる)、蘭鋳葉(葉の先端部分がらんちゅう金魚の尾びれのようになる)、弁天葉(葉に縁取りが入る一種)などの変わり葉は、江戸時代 多くの園芸植物で珍重されていました。



神苑地図